実用化が期待されている自動運転カーとは?メリットや問題点

そなえる

ここ数年、自動運転カーの話題がニュースで扱われることが多くなってきました。車が自動で街を走る光景はSFの世界の話でしたが、にわかに現実味を帯びてきています。

今回は、実用化が迫る自動運転カーの現状と未来についてお伝えします。

世界規模での研究が進められている

自動運転カーとは、文字通り自動で運転される車のこと。現在、世界中の自動車メーカーなどがこぞって研究を進めており、すでに公道での実証実験も始まっています。この自動運転カーはいったいどういう仕組みなのか? 驚きの技術に迫っていきます。

自動運転カーには2種類ある

自動運転カーには、今までの自動車と同じようにハンドルとペダルが付いていて人間も運転できるタイプと、ハンドルもペダルもなく人間が運転できない完全自動運転タイプの2種類があります。

前者は、すでに実用化されている運転支援システムを高度に進化させたもので、航空機のオートパイロットに近いものです。後者はドライバーを必要としないため、ロボットカーとも呼ばれています。この技術が実用化されれば、人の移動はもちろん、物流にも革命的な変化をもたらすでしょう。

現在地から周辺の情報を判断している

自動運転カーは、車体に装備したレーダーやLIDERなどの各種センサー、カメラなどを使って、センタ-ラインや中央分離帯、ガードレールや側溝、信号、標識などの道路の情報、周辺の車両や歩行者、障害物といった周辺情報、GPSで測定した現在地と目的地の位置情報を取得します。

そして、それらの情報をコンピュータが瞬時に解析し、適切に車両をコントロールします。各社は、これらのセンサー類と処理技術の開発に大きな時間と労力を使っています。

レーダー

ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを使用。物体との距離を測定することができ、探知距離も長い反面、形状までは把握できないのが難点。

LIDAR

紫外線や赤外線、可視光線を利用したレーダー、レーザーレーダーとも呼ばれる。物体の形や物体までの位置と距離、形状を検知できる。しかし、天や霧に弱く、探知距離も短めで、非常に高価なのが難点。そのため、安価なLIDARの開発競争が激化している。

GPS

米国が運用する衛星測位システム「グローバル・ポジショニング・システム」の略称。自車の現在位置を把握できるが、最大で10m前後の誤差があるため、センサーやカメラの情報を利用した補正が必要。

カメラ

周辺の状況をカメラで撮影し、画像解析技術を用いて、信号や標識、他の車両、歩行者などの周辺状況を認識する。今後、搭載カメラの高画素化が進み、認識能力がアップする予定。

自動運転カー導入により期待されていること

自動運転カーが実現すると、交通の流れが円滑化されることによる「渋滞の緩和・解消」、操作ミスや注意不足がなくなることによる「交通事故の現象」、不要な加減速の低減や渋滞の抑制による「CO2削減」などの効果が期待されています。

また、駐車場まで自動で移動できるため駐車場不足の解消や、高齢者や体の不自由な方の運転支援、無人の物流システムなどへの活用できでしょう。

メーカーにとっては、ハンドルやペダルが不要なロボットカーは、車内レイアウトに制約が少なくなるため、デザインに自由度が増し、快適性の向上も図れるというメリットがあります。

こんなメリットがある!

・交通事故の減少

・渋滞削減

・駐車場不足の緩和

・老人の運転支援、誤操作の防止

・老人や体の不自由な方の移動支援

・無人物流システムの構築

・設計の自由度の上昇 など

各社が進める取り組みの紹介

自動運転カーの技術は日進月歩で進化しています。世界各国の自動車メーカーはもちろん、GoogleやAppleといったIT系企業、ベンチャー企業も参入し、開発競争にしのぎを削っています。ここでは、開発をすすめる各社の取り組みについて見ていきましょう。

複数の技術は既に実用化されている「運転補助機能」

自動運転カーの前段階となる運転支援システムは、すでに複数の技術が実用化されています。具体的には、先行車との車間距離を保ちながら一定速度を保って走行する「アダプティブクルーズコントロール」、車線からのはみ出しを防止する「車線逸脱防止支援システム」、ウインカーを出すと自動で車線を変更する「オートレーンチェンジ」、障害物を完治して衝突に備える「衝突被害軽減ブレーキ」です。

各社、それぞれ独自の名称をつけていますが、いずれもこれらの機能のうちのひとつ、または複数を組み合わせたものです。

実用化されている運転補助機能の技術

・スバル:アイサイト ver.3

・トヨタ:高度運転支援システム (AHDA)

・ニッサン:プロパイロット

・メルセデス・ベンツ:ディストロニック・プラス

・フォルクスワーゲンレーンキープアシストシステム  など

自動運転のレベルは5つに分類されている

自動運転技術に対しては、各国で様々な取り組みをしており、基準や規格、定義がバラバラなのが現状です。日本では、米国運輸省道路交通安全局 (NHTSA) の基準にならって、自動運転のレベルを0から4の5段階に定義しています。

レベル0(自動化なし)

レベル1(特定機能の自動化)

レベル2(複合機能の自動化)

レベル3(半自動運転)

レベル4(完全自動運転)

国内外の大手メーカー間で起こる開発競争

自動運転カーの開発は、自動車メーカーにとって重要な新規事業になっており、各社が開発にしのぎを削っています。なかでもドイツのメーカーが先行しており、特にボルボは自動運転カーの開発では最も進んでいますが、2017年に行われる予定だった実証実験は2021年に先送りとなっている状態です。

また、ダイムラーやフォルクスワーゲンも、自動運転カーの開発を最も早く始めたメーカーで、関連技術を多数保有しています。

日本では、トヨタが関連特許を約1400も持っており、全体をリードしていますが、ニッサン、スバルなども運転支援システムを続々と実用化しており、こちらも順調に開発が進んでいる模様です。

アメリカでは、フォードが、フォード・フュージョン・ハイブリッドをベースに着々と開発を進めていますが、もっとも先んじているのはテスラです。世界の自動車メーカーのなかでもっとも歴史の浅いテスラですが、2015年10月に限定的ではありますが、自動運転機能を搭載したモデルの提供をはじめ公道を走行しています。

そして、残念なことに、世界初の自動運転カーによる交通事故を起こしてしまいました。この事故のニュースで、テスラの名を知った方もいるのではないでしょうか?

他の分野の会社も参入している

自動運転カーは新しいビジネスチャンスであるため、自動車メーカー以外も参入しています。代表的なのはGoogleで、「Google セルフドライビングカー」という名称で、自動運転カーの研究開発を着々と進めています。市販の車両に各種センサーを取りつけて自動運転カーに改造したテスト車両を公道で走らせており、すでに200万キロを無事故無違反で走行することに成功しました。

また、Appleも自動運転テストを2017年から行っています。

限定的に実用化されているものもある

公道を走る自動運転カーは実用化されていませんが、閉鎖的空間や特定のルートを巡回する車両に限定すれば、すでに実用化されています。例えば、イスラエル軍が国境地帯をパトロールする車は無人の自動運転カーです。軍事用のため機密が多く、詳細は不明ですが、すでに実戦配備されています。また、鉱山では超大型ダンプの無人運行システムが、建設重機大手のコマツやキャタピラーによってすでに実用化されています。高精度のGPSと各種センサーを利用し、コントロール室からルートや積載場所、目的地などを指定することで、完全な無人運行を実現しています。

・イスラエル軍の無人パトロール車

・鉱山での超大型ダンプの無人運行システム(コマツ・キャタピラー) など

問題点や今後の課題とは?

着々と技術開発が進む自動運転カーですが、解決しなければならない問題がたくさんあります。ここでは、障害となっている問題と今後の課題について見ていきましょう。

①様々な角度からの法律の整備・国際的な基準の制定

ここまで見てきたように、早ければ数年以内に自動運転カーは実用化される見込みです。しかし、技術以外で問題となる部分が多く残されています。大きなものでは、自動運転カーのことがまったく考慮されていない法律の問題と責任の問題、そして、事故発生時にどのような選択肢を取るかという倫理的、人道的問題です。ここからは、こうした問題について考えていきます。

②定義や法律の統一化

道路交通に関する国際条約「ジュネーブ道路交通条約」では、公道を走行できる自動車は「常時人間が運転する」と定義されているため、自動運転カーの公道走行は違法になってしまいます。そのため、仮に完成しても販売することができないのが現状です。

そこで、まずはこのジュネーブ道路国際条約の改正が必要になります。そのため、国連を中心に、世界的に統一された自動運転カーの定義や法律についての議論が続けられています。

③自動車保険・賠償責任に関する新制度・法律の整備

自動運転カーが事故を起こした場合、「誰に責任があるのか?」という問題があります。ドライバーが運転にまったく関与しない完全自動運転カーの場合、責任の所在がはっきりせず、賠償責任等を誰が負うのかという問題が発生します。自動車保険の制度も自動運転カーは想定しておらず、こちらも新たな法や制度を整備しなければなりません。

④システムの乗っ取りやバグなどのトラブルに対応できない

自動運転カーは、コンピューターで制御するため、ハッキング等で乗っ取られてしまうと、誘拐や殺人、テロなどの犯罪に悪用される可能性があります。すでに、市販されている車両のシステムが乗っ取られる事例がいくつも発覚しおり、なかにはネット経由で遠隔操作できるものもあるため、懸念が広がっています。

また、システムにバグが発生した場合、システムの誤作動による事故が発生する可能性があります。特に完全自動運転カーは、ハンドルもペダルもないため人間が操作できず、こうしたトラブル時に緊急回避ができないという問題を抱えています。

⑤事故不可避時に瞬時な選択ができない

一番の問題と考えられているのが、事故が不可避になったときの選択です。仮に事故がどうしても回避できない状況に陥ったとき、右に避ければ中高年5人に衝突、左に避ければ子供1人に衝突する場合、どちらの生存を優先するようにプログラムするかという倫理的、人道的な選択の問題です。老若男女のうち生存を優先するのは誰か、人数の大小など、人間の命を単純に条件式で選択することは難しい上、瞬時にそれを判断することも不可能なため、最も解決が難しい問題と考えられているのです。

もっと言ってしまえば、前方のトラックから積み荷が落下し、そのまま直進すれば自分が死亡、左に避ければ家族5人が死亡という場合、被害者が最小限になるのは直進することですが、搭乗者を殺すようなプログラムがされている自動運転カーを買おうという人はいないはずです。さらに搭乗者を助けるために他人を犠牲にした場合の責任の所在についても判断が難しく、複雑な問題を解決しなければなりません。こうしたジレンマは技術で解決できるものではないので、大きな障壁になってしまうのです。

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