音楽メディアの今までとこれからを徹底検証

 

音楽はスマホやパソコンでインターネットからダウンロードする時代になりつつあります。しかし、ちょっと前まで、音楽はCDを買うのが当たり前でした。これらはいったいいつから切り替わったのでしょうか?

今回は、古くはレコードから最新のストリーミングまで、音楽メディアの歴史を振り返ると同時に、パソコンと音楽の関係についても掘り下げていきます。

アナログメディアを深掘り

人間にとって音楽は切っても切り離せない関係です。古来より音楽は祭礼や式典行事に欠かせないものであり、娯楽としても私たちを楽しませてきました。そんな音楽ですが、記録することができないものでした。ではいつから音楽を記録できるようになったのでしょうか。まずは、音楽を記録できるようになった時代について振り返っていきましょう。

「音を記録」という概念が生まれたのは約150年前

音楽は古代文明の頃から人間の文化のひとつとして楽しまれてきましたが、口伝で歌い継ぐか、楽譜として残すかしか後世に伝える方法がありませんでした。しかし、1877年にアメリカの発明王エジソンが円筒形の記録体に音が記録できる「蓄音機」を発明したことで、「音楽」を記録しておくことができるようになりました。

エジソンの発明から10年後の1887年になると、エミール・ベルリナーがディスク型のレコードを開発します。ディスク型は、音質も良く量産性に優れ、中心部にレーベルを貼れるといった特徴があったことから、エジソンの方式を駆逐して市場を席巻しました。その後、回転数が統一され電気式蓄音機の登場によって、レコードが全世界の標準となったのです。

ちなみに、初期のレコードは1枚で最大約3分程度しか録音できず、クラシック音楽の長編などは数十枚組になることがありました。そのため、レコードを分厚いアルバム状のケースに収納し「写真アルバムっぽい本」のような装丁で販売されていたのですが、これが今も使われている「アルバム」の語源になっています。

その後、レコードは材質の改良などが進み耐久性などが進化。1948年には従来と同じ大きさで10倍の30分の録音ができる「LP (long play)版」の登場、1949年には「シングル・レコード」が登場し、メディアとしての完成を見ます。

世界中で爆発的に普及したカセットテープ

レコードの登場で一般家庭でも音楽を楽しめるようになりましたが、盤面に直接記録するため音質が悪く、レコード盤の摩耗、針の消耗など様々な問題がありました。それでも十分魅力的だったのですが、第二次世界大戦後になると、磁気テープへの録音という新しい記録方法が登場します。

磁気テープ自体は、大戦さなかの1929年にドイツで開発されていたもので、その技術を使った商品が1948年にアメリカで発売されます。ただし、これは業務用のもので、録音スタジオなどで使われるものでした。1960年台になるとステレオ録音やマルチトラック録音、音源の編集といった技術が登場します。

そして、1965年にオランダのフィリップス社がすでに発売していた磁気テープ式の「カセットテープ」の特許を無償公開したことで、標準規格として世界中に広まることになります。日本でも1966年にTDKが国産初のカセットテープを発売し、以後、コンパクトで安価のうえ、取り扱いが簡単で録音もできるメディアとして世界中で爆発的に普及します。

カセットは音楽を録音済みの「アルバム」として発売されたもののほか、音が記録されていない状態のものも販売されました。無音のカセットはラジオを録音したり、カセット同士でダビングしたりできたため、手軽に使える音楽メディアとして多くの人に使われたのです。

1979年にはソニーから外出先でもカセットを再生できるコンパクトな「ウォークマン」が発売され、一世を風靡しました。また、車載用としても最適だったため、カーオーディオの世界でもカセットは欠かせないものとなっていたのです。

レトロカッコ良いと再注目を浴びているカセットテープ

カセットテープは、コンパクトディスクの登場で衰退していくのですが、アナログのレコードが復活したようにカセットも再注目されています。もともとはアメリカのインディーズレーベルやバンドが、カセットテープにダウンロードコードを付けて売っていたのが発端だったのですが、カセットを知らない世代には「目新しくてカッコイイ」と感じるものだったようです。また、スマホやパソコンでのダウンロードが苦手な高齢者にとっては、カセットは慣れていて使いやすいため、かなりの愛用者がいるようです。

日本でも、タワーレコードであるバンドがカセットテープを無料配布したほか、カセットでの販売に力を入れるインディーズレーベルもあるなど、音楽好きの間でひそかなブームになりつつあります。盛り上がりに乗って、カセットの音源をパソコンに取り込むことができるUSB端子付きのカセット再生機器なども発売されており、人気を集めています。

光ディスクの登場で音楽メディアは新時代に突入

蓄音機の発明からレコードの誕生、そしてカセットテープの登場と、蓄音機の登場から約100年で音楽は本当に身近なものとなりました。そして、1982年にコンパクトディスクが登場したことで、音楽メディアはまったく新しい時代に突入します。ここでは、コンパクトディスクから始まったデジタルメディアについて振り返っていきます。

音楽メディアに革命を起こしたCDの存在

爆発的に普及し、音楽メディアの市場を席巻したカセットテープですが、コンパクトディスク(以下CD)の登場で衰退に向かいます。CDはソニーとフィリップスが共同開発した「光ディスク」の規格で、1982年に世界初のCDプレーヤーが発売されました。CDはデジタル信号で音楽を録音しており、コンパクトで音質の劣化がなく取り扱いも容易というメリットからぐんぐんシェアを伸ばし、1988年にはレコードを追い抜きました。

こうして、時代はアナログからデジタルへと移ります。デジタルの利点は前述したように音質の劣化がなく編集も簡単ということが挙げられますが、さらにコンピュータとの親和性が高いということも見逃せません。つまり、1990年台になって急速に普及した家庭用のパソコンとも愛称が良かったのです。

なお、急速にCDに取って代わられたレコードと違い、カセットはCDの登場以降も使われ続け、1990年台前半まではCDとシェアを争うほどでした。しかし、CDの勢いに押され続け、1990年台の終わり頃には完全にCDに市場を制圧されてしまいました。

日本で流行したCDシングル

CDの発売後、シングル・レコードに準じた「CDシングル」が発売されていましたが、CDと同じサイズ(12cm)のディスクを使って2~3曲しか入っておらず、かつ価格も1500円前後と割高だったため、売れ行きは伸びませんでした。そのため、ディスクサイズが3分の2で安価な「8cmCDシングル」が開発され、1988年に発売されます。これが大当たりし、わずか半年でシングル・レコードのシェアを逆転します。

ちなみに、CDシングルは縦長のジャケットで売られていましたが、これは日本だけのものでした。また、CDシングルが流行ったのも日本だけで、欧米ではあまり普及しませんでした。現在では、12cmのCDシングルが主流になっており、8cmのCDシングルを見かけることは、ほとんどありません。

データを書き込めるCD-Rの登場

カセットの利点は自分で自由に録音できることでしたが、CDではそれができませんでした。そのため、CD登場以降もカセットは音楽メディアとして生き残っていたのですが、日本の太陽誘電がデータを書き込めるCD-Rを開発し、1989年に市場に送り出しました。

当初は高価で対応する機器もなく、一般家庭には普及しませんでしたが、1995年の「Windows95」の登場による爆発的なパソコンの普及と、対応ドライブの低価格化によってCD-Rは徐々に市民権を得ていきます。とはいえ、当初はCD-R1枚1000円、ドライブは10万円と、とても一般人には手が出る金額ではありませんでした。

しかし、2000年台になるとメディアもドライブも低価格化し、パソコンとCD-Rを使った音楽CDの私的コピーや好きな曲を集めたオリジナルCDの作成ができることが雑誌などで広まると、多くの人がCD-Rを使って音楽を楽しむようになりました。こうして、パソコンと音楽がつながることになったのです。

ただし、パソコンとCD-RでCDを簡単にコピーできるようになったため違法な不正コピーの問題も起きてしまいます。そこで「私的録音録画補償金」という著作権を保護するための料金が上乗せされた「音楽用」のCD-Rも誕生しましたが、普及しているとは言いがたい状況です。

持ち運びが便利なミニ・ディスク(MD)の登場

ミニ・ディスクは、1992年にソニーが発売した音楽メディアです。名前の通り、直径が6.4cmの小さなケースに光ディスク(以下MD)を収納したもので、開発コンセプトはカセットテープの代わりになることだったそうです。ケースにはシャッターが付いており、ディスク面に埃や指紋が付きにくく、使いやすさに配慮されていることがわかります。

ただし、音源を圧縮して録音するためCDよりも音質が悪いため、わざわざMDでアルバムを買う理由がないことなどから「アルバム」を収録したMDは普及しませんでした。一方、自由に録音できる生のMDはコンパクトで持ち運びやすいため、ポータブル機器や車載用として人気を博します。また、MDの大きな特徴である「曲名やアーティスト名などを入力できる」ことも人気の要因となりました。

しかし、パソコンで音源を圧縮できるMP3とコンパクトな再生機器の登場など、パソコンで音楽を扱う時代が訪れたことも重なって、次第に衰退していきます。2013年には録音再生に対応した機器の出荷をソニーが停止したことで、約20年の歴史に幕が降ろされました。

パソコンで音楽を気軽に楽しめるMP3の普及

1992年に誕生したMP3の正式名称は「MPEG-1 Audio Layer-3」という規格で、音源を圧縮して記録するものです。極端な声質の劣化を伴わずに圧縮できることから人気を集め、CDからパソコンに音楽を取り込む際、使われるようになりました。

わざわざ音源を圧縮する必要があったのは、1990年台のHDDはとても高価でCDをそのまま保存することが難しかったこと、当時のインターネット回線は電話回線を使ったものが主流で、通信速度が28.8kbpsと非常に低速だったことが理由です。簡単に言えば、大容量のファイルを今のように手軽に扱うことができなかったわけです。

こうして、パソコンで音楽を楽しむ時代に突入します。パソコンでMP3に圧縮した音源を持ち出せるポータブル機器も多数登場し「MP3プレーヤー」と呼ばれました。現在では、様々な圧縮形式が使われるため「デジタルオーディオプレーヤー」と呼ばれるようになっていますが、当時はMP3がデジタルオーディオの代名詞だったのです。

ただし、MP3は画期的な技術だったのですが、著作権保護機能がありませんでした。そのため、残念な話ですがCDからパソコンにアルバムをMP3で圧縮コピーし、インターネットを通じて配布したり交換したりする違法行為を助長してしまったのも事実です。

音楽を店頭で購入から自宅でダウンロードの時代に!

レコードからカセットテープ、そしてCDへと移り変わっていった音楽メディアですが、「メディアを店頭で購入する」という入手方法は、長い間変わりませんでした。しかし、パソコンとインターネット回線の普及でこれが一気に様変わりします。ネット上でデータをダウンロードして音楽を買えるようになったのです。ここからは、こうしたインターネット時代の新しい音楽の入手方法について見ていきましょう。

音楽が身近にあるライフスタイル

一般家庭へのパソコンの普及とインターネット回線の高速化と低価格化によって、メディアを購入するのではなく「音楽データをダウンロードする」という新しい入手方法が誕生します。自宅にいながら好きな時に購入できる利便性や音楽をパソコンで聴いたり、デジタルメディアプレーヤーに移して聴いたりすることが一般化してきたこともあり、2000年代に入るとダウンロード販売はあっという間にCDを駆逐し、音楽市場のシェアのほとんどを奪い取りました。

2001年には初代「iPod」が登場し、その2年後の2003年には、アメリカのアップルコンピュータが、パソコンを使って楽曲のダウンロード購入ができる「iTunes Store」を発表、2004年にオープンしました(※日本は2005年)。「iPod」人気と相まってiTunes Storeは大成功を収め、その後、多くの音楽販売のダウンロードサイトが登場しては消え、音楽販売サイト戦国時代といえるほど激しい競争が繰り広げられることになったのです。

同時に、ファイル共有ソフトなどを使った違法な音楽データの配布、共有、交換が世界的に大きな問題となります。各国で法律の制定や厳罰化などで違法配信は減っていますが、撲滅には至っていません。日本もすでに厳罰化されており、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が課されますので、絶対に違法配信や違法な音楽データのダウンロードは行わないようにしましょう。

ストリーミングで聴きたいときに聴きたい音楽を

2000年代はダウンロード販売が主流でしたが、近年、ストリーミングによるサービスが注目を集めています。ストリーミングとは、データを受信しながら同時に再生を行う方式のことで、ダウンロードが終わるまで待たなければならなかった今までのサービスと異なり、聴きたい音楽を聴きたい時にすぐ聴けるのが特徴です。

音楽データをパソコンやスマホに保存しておく必要がないため、HDDやSDカードの容量の心配をする必要がありません。また、スマホに聴きたい曲を保存していないので、すぐ聴くことができないといったこともなくなります。何より、懐かしい思い出の曲から最新のヒット曲まで、聴きたい時に自由に聴けるのは、音楽好きでなくても使いたくなるサービスといえるでしょう。

各サービスに特色がありますので、楽曲数やジャンルなどをチェックして、自分に合うサービスを探してみてはいかがでしょうか?

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